保坂 浩紀氏によるUXデザイン

意識しながら作っているのですが、組み込み時にできるできない、デザイン的に入る入らないで疎かになりがちな部分にUXは転がってたりするのかもしれませんね。

スマホの地図に足りないものとは? アナログ体験をヒントに改善するUXデザイン

みなさんはスマホの地図アプリを使っていますか。GoogleマップやAppleのマップ、Yahoo地図といった地図アプリは、知らない土地でも目的地までナビゲートしてくれる、とても便利な存在ですよね。一方で、例えば観光地に行った時などは、そこでもらえるパンフレット兼紙の地図を見ながら色々な施設を回ることもよくあるかと思います。

今回の記事では、地図アプリの話題を通して、アナログ体験とデジタル体験それぞれの良さに触れ、アナログ体験をヒントにデジタル体験を向上できるかを探っていきます。

1. スマホの地図に足りないもの
もはや手放せないスマホの地図アプリですが、いくつか弱点もあると感じています。

その1つが「一覧性」です。

画面サイズという制約から、スマホで見る地図はどうしても一覧性には欠けてしまいます。地図全体を見ようとしてズームアウトすると、詳細情報が見えなくなり、詳細情報を見ようとすると、全体像が見られなくなります。

その点、紙の地図はその大きさと精細な印刷のおかげで、全体像と詳細を兼ね備えています。

例えば、旅行を計画する際、旅行サイトやGoogleマップを使えばとても簡単に行き先を探すことができます。ただ、複数人と集まって計画する場合は紙の地図を広げながら話した方がはかどったりします。明確な目的地が決まっていない時は、全体像と詳細を兼ね備えた紙の地図の方が行き先を探しやすいのです。

他にも、アナログ地図の方が優れている点はいくつかあるでしょう。

スマホの地図(デジタル)と紙の地図(アナログ)それぞれのメリット・デメリットを以下にまとめてみました。

スマホの地図(デジタル)
■メリット
・ズームイン、アウトがラク
・自分がどこにいるかすぐに判る
・目的地にナビゲートしてくれる
・世界中どこでも調べられる
・最新情報が得られる
■デメリット
・画面サイズという制約
・一覧性に欠ける
・デザインの自由度が低い

紙の地図(アナログ)
■メリット
・サイズの制約が(ほぼ)ない
・一覧性がある
・情報量が多い
・デザインの自由度が高い
・簡単に人に渡せる(共有可能)
■デメリット
・ページをまたぐ行為が面倒
・かさばる
・自分がどこにいるか判り難い
・情報がアップデートされない

このように、デジタルの体験は便利になった分、アナログ体験の良さが失われています。

2. アナログ体験をヒントに、デジタル体験を改善する
続いて、コーポレートサイトの会社情報に住所と地図を載せるケースを考えてみます。単にGoogleマップを貼り付けるだけでなく、もう少しユーザー体験を向上させるとしたらどうすれば良いでしょうか。

まずは、なぜ会社情報に地図を載せる必要があるのかを改めて考えてみます。

最も考えられる目的は、その会社を訪れる人への案内です。クライアントかもしれませんし、会社を訪れる就活生・転職活動者かもしれません。利用シーンは、自宅(PC)はもちろん、外出先(スマホ)で見ることもよくあるでしょう。そのようなシーンを想定すれば、地図アプリの起動リンクがあると便利です。

次に、地図アプリだけでは伝わらない要素を考えてみます。

もし多くの支店がある場合、俯瞰した地図で各支店の位置を示し、詳細地図で各支店へのアクセス方法を載せれば、一覧性を担保しつつ詳細を説明できます。

詳細情報についても、「◯番出口から徒歩◯分」といった情報は地図アプリからはなかなか読み取れないため、併載するとより親切になるでしょう。

さらに、自社のロゴを地図に載せて、自社のカラースキームを地図に反映すれば、よく見るGoogleマップからは一線を画し、CI(コーポレートアイデンティティ)をよりアピールできます(このあたりのGoogleマップカスタマイズについては、こちらの記事が詳しいです)。

また、デジタル地図で伝わらない複雑な場所にある場合は、案内に必要なエッセンスを抜き出して自作した地図を併載するのも手です。もちろん、手間はかかりますが(例えばこちらの地図では、複数の似たビルがある中の1つを明示しています)。

では、これをまとめると以下のようになります。

・第一段階:地図アプリの起動リンクを入れる
・第二段階:デジタル地図では欠けてしまう情報を入れる
     (「最寄り駅◯◯」「◯番出口から徒歩◯分」など)
・第三段階:自社ロゴやカラースキームを地図に取り入れる
・第四段階:(どうしても複雑な場合)必要な情報だけを抜き出して自作する

ここまで出来れば、確実に良いユーザー体験を提供できるでしょう。

3. 応用事例
今度は、アナログ体験をヒントにデジタル体験を改善する方法について、他への応用例も考えてみます。

例えば、LINEのようなメッセージングツールは、スタンプを使って手軽にコミュニケーションが可能ですが、スタンプにさらに手書き文字を加えることができるようになれば、特別なメッセージを送りたいときに役立つかもしれません(アナログ体験のヒント=手書きの良さ)。

電子書籍についても、改善の余地がまだまだあると思っています。実際の本であれば、よく開くページは「折グセ」がついて、パラパラっと捲るだけですぐに読みたいページにたどり着けたりします。電子書籍でも、ページを行き来するUIでお気に入りページのところに「ひっかかり」をつくることで似たような体験を提供できるかもしれません(アナログ体験のヒント=紙の折グセ)。

このように、アナログ体験にはデジタル体験を改善する多くのヒントが隠されていることが判ります。

まとめ
今回の記事では、地図アプリの話題を通して、アナログ体験とデジタル体験それぞれの良さに触れ、「アナログ体験をヒントにデジタル体験を向上する」アプローチを示してみました。UXはデジタルな体験だけにとどまりません。アナログな体験にも目を向けてみましょう。アナログ体験の要素をデジタルに咀嚼して適用することで、提供するデジタルUXを一歩前へ進めることができます。

0 Comments

Add your comment