KLabが実施する学生向け3DCGデザイナーズコンテスト

モバイルオンラインゲーム会社のKLabが実施する学生向け3DCGデザイナーズコンテスト。優勝賞金は30万円。CGWORLDでもおなじみの北田栄二氏(ModelingCafe)、田島光二氏(Double Negative Visual Effects)、早野海兵氏(画龍)、松山 洋氏(サイバーコネクトツー)が審査員となり、日本一の学生3DCGデザイナーを決定する。本戦当日(2017年8月5日(土))はコンテスト以外にも、豪華審査員によるトークセッションや、北田氏、田島氏による講演などが開催される。

クレメンス・ベルガー氏の製作した映像・画像が紹介されています。作成の流れの様なものが見えると思います。

KLab Creative Fes'16静止画部門グランプリ作品メイキング>>リアルタイムPBRでオリジナルキャラを表現
https://entry.cgworld.jp/column/post/201702-clemens.html

Point01:ツール&スケジュール
本作の制作にあたり、クレメンス氏が使用した主なツールは以下の通りだ。

ZBrush(主な用途:キャラクターのスカルプト)
3ds Max(主な用途:キャラクターのポリゴンモデリング、ハードサーフェスのモデリング、リギング)
Substance Painter 2(主な用途:テクスチャ制作、ベイク処理)
CrazyBump(主な用途:テクスチャ制作)
Photoshop(主な用途:テクスチャ制作)
Marmoset Toolbag 2(主な用途:リアルタイムCGのプレビュー)
学校の授業では主に3ds MaxとPhotoshopが使われており、カリキュラムにPBRは含まれていない。そのため、クレメンス氏は最新のゲーム開発現場のパイプラインを参考にしながら、リアルタイムCGでのPBRに必要なツールを個人で購入したという。なお、制作中はMarmoset Toolbag 2でリアルタイムCGのプレビューをしていたが、完成後にデータをUnreal Engine 4で確認したところ、ほぼ同じ質感でレンダリングできたそうだ。
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▲2年次2月はじめから、KCF16受付締切の3年次6月末までの5ヶ月間にわたった制作のスケジュール。「同時並行で学校の課題もやっていましたが、終盤の1∼2ヶ月は本作の制作にほとんどの時間を使いました。AM9時からPM9時まで毎日学校で制作し、家に帰ってからもAM1時か2時くらいまで制作していました。どうしても完成させたかったので、他のことは全部放置して、毎日15時間以上クランチタイムでした」

5ヶ月にわたった制作は、大きく3段階に分けて進められた。第1段階では、キャラクターと世界観のデザインに加え、リアルタイムCGでのPBR研究が行われた。「まずは集中して頭部をつくり込みながら、PBRによる表現を試行錯誤しました。同時進行で全部を制作するのではなく、頭部だけを完成させ、早い段階でクオリティラインを設定したのです」。制作全体の中で、この段階が最もエキサイティングだったとクレメンス氏はふり返る。「頭部のCGモデルが完成し、全てのシェーダの設定が終わり、その成果を初めてMarmoset Toolbag 2で確認したとき、『いけそうだ』という最初の確信をもてました。もし全てを同時進行で進めていたら、途中で自信をなくして諦めていたと思います」。

続く第2段階では、身体、衣装、ハードサーフェス(義足や剣など)のハイポリゴンモデルが制作された。第3段階では、第2段階でつくったハイポリゴンモデルをリアルタイムCG用(ゲーム用)に調整する作業と、最後の仕上げが行われた。

Point02:キャラクターと世界観のデザイン
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▲【左】ARIESのデザイン案。「責任感の強い一匹狼。軽装備で素早く立ち回り、敵の急所をピンポイント攻撃する」という設定に沿って衣装や武器がデザインされている/【右】ARIESが冒険する世界を描いたコンセプトアート

キャラクター『ARIES』をデザインするにあたり、クレメンス氏がこだわったのは自分がつくりたい要素を詰め込むことだった。「人体、様々な素材の布や皮、メカに加え、リアルタイムCGでは表現しづらいファーなどにも挑戦することで、自分の技術力を高めたいと思っていました」。加えて、派手なアクションゲームに登場する主人公キャラクターという設定に合わせ、パーツひとつにいたるまで考えてデザインすることを心がけたという。「どんな世界で、どんな生き方をして、どんな闘い方をするのか、世界観も合わせてデザインしなければ薄っぺらいキャラクターになると思い、コンセプトアートも描きました。主人公キャラクターらしい特徴的なデザインにすること、プレイヤーが何時間見続けても飽きのこない面白いデザインにすることも意識しました」。いずれは、ARIESが活躍するゲームをつくる日が来るかもしれない......、そんな思いをもって制作に打ち込んだ方が、気持ちが盛り上がって良い作品になるとクレメンス氏は語る。

Point03:PBRの研究と、頭部の制作

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▲【左】ZBrushと3ds Maxを併用した、頭部の制作過程を解説している/【右】頭部のテクスチャと、眼球の制作過程を解説している

ARIESの造形にあたっては、最初にZBrushで全身をスカルプトし、大まかなプロポーションを検討した。その後はZBrushと3ds Maxを併用し、頭部を集中的につくり混み、ハイポリゴンの頭部と、リアルタイムCG用のローポリゴンの頭部を完成させた。「まずはシンメトリーでスカルプトした後、大雑把なシェイプと細かいシェイプの2段階で、左右非対称な部分を少しだけつくっています。完全に左右対称の顔は人形のように見えてしまうためです。ARIESは実際の人間とはちがうセミリアルな造形にしたかったのですが、『可愛いとは何か』『凛々しいとは何か』が途中でわからなくなって苦労しました」。2年次につくったレゴラスとはちがい、オリジナルキャラクターの場合にはゴールを自分で設定する必要がある。長時間見続けていると客観性のある判断ができなくなるため、先生や他の学生に見せて意見を聞いたり、時間を置いてから見直したりしながら、試行錯誤を繰り返したという。

テクスチャ制作には、Substance Painter 2、CrazyBump、Photoshopを併用している。リアルタイムCGでサブサーフェススキャッタリング(※3)のような効果を出すためにTranslucency(半透明)マップやSubdermis(皮下)マップを使ったり、肌のディテールを表現するためにFuzz(うぶ毛)マップやCavityマップを使ったりしたという。

※3 英語表記はSubsurface Scattering。SSSと略す。人間の皮膚や大理石、ロウソクなどの光を透過する物体は、表面から入射した光が内部で散乱した後、外部に放出されることで半透明に見える。サブサーフェススキャタリングは、この特性をシミュレーションするレンダリングアルゴリズム。フォトリアリスティックな人間の皮膚表現では必須の技術となっている。


「どれも初めて使うマップだったので、使いこなせるようになるまでの研究に時間がかかりました。特にNormal(法線)マップとParallax(視差)マップを併用した眼球の表現にはこだわっています」。人間の眼球は完全な球体ではなく、角膜の部分が突出している。瞳を構成する水晶体と虹彩は、角膜の奥に位置するため、角膜のレンズ効果で歪んで(屈折して)見える。この現象を表現するため、クレメンス氏はNormalマップとParallaxマップを併用した。「水晶体と虹彩が突出して見えると、人形のような、生命力を感じない眼球になってしまいます。2種類のマップを組み合わせたことで、リアリティのある眼球を表現できました」。

Point04:身体と衣装の制作
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▲【左】ZBrushを使った身体のスカルプトの過程を解説している/【右】ファーとジャケットの制作過程を解説している

ARIESの身体は、現実の水泳選手やランナーの身体を参考にしつつ、現実よりも美しく機能的な表現を目指している。例えば、『接近戦の得意なキャラクターなので、肩幅は広め』『素早さと軽さを表現するため、ウエストは細く、股の位置は高い』など、キャラクター設定と紐付いた造形がなされている。一方で、解剖学書を参考にしながら肩・腕・脚の断面を造形するなど、現実に即した表現をバランスよく組み合わせている点も興味深い。

ジャケットのファーは、Shell(シェル)法(※4)で表現されている。「8枚のシェルレイヤーに、4種類のAlphaマップと Albedoマップを適用することでファーを表現しています。立体感を出すため、上のレイヤーほどAlphaマップは細かく、 Albedoマップは明るくしてあります。PlayStation 2版の『ワンダと巨像』(2005)で使われていたことで、この効果を知りました。最近は使われることの少ない手法ですが、世界観に合ったファーを表現できたと思います。ファイバーメッシュを使えば200,000ポリゴンくらい必要ですが、シェル法のおかげで約12,000ポリゴンに抑えられています」。

※4 毛の断面を描いた複数枚のテクスチャを重ねることで、擬似的にボリューム感のあるファーを表現する手法。

Point05:ハードサーフェスの制作
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▲【左】義足のデザイン過程を解説している/【右】義足のベイク処理と、リトポロジーの過程を解説している。ハードサーフェスは身体のように変形しないため、三角ポリゴンにすることで面の数を削減している。さらに形や場所に応じて、リトポロジーの具合を細かく調整している
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▲【左】剣の設定と、ARIESの戦闘スタイルを解説している/【右】剣の装着方法と、ベイク処理の過程を解説している。ハードサーフェスはエッジ部分のディテールが粗いと格好よく見えないため、ベイク処理の際には特に気をつかったという。「ローポリゴンのCGモデルに直接ベイクすると綺麗なエッジが表現できなかったので、法線の数を増やしたベイク専用のCGモデルを制作し、ベイク後にローポリゴンのCGモデルと入れ替えました」

義足や剣などのハードサーフェスは、オリジナリティがあり、リアリティもあるデザインを目指したという。「動くとパーツが貫通するようなリアリティのないデザインではなく、『実在するかもしれない』『装着してみたい』と思うようなデザインにしたかったのです。義足の制作では、最初にデザイン画を描き、ラフなCGモデルをつくって可動範囲をチェックし、さらにデザインをブラッシュアップしていきました」。実際に義手や義足の制作に関わっている人にもデザインを見てもらい、貴重なアイデアをもらったとクレメンス氏はふり返る。「筋肉がないと、地面を踏んだときのショックを吸収できないので、生身の部分が痛くなると聞きました。そこで義足の足首付近に、ショックアブソーバーの役目を果たすバネを取り付けました」。

制作の過程で、クレメンス氏は様々な人に作品を見せ、何度も意見を聞いたという。「ファンアートとはちがい、ゲームアートはユーザーにサービスすることが主な目的だと思っています。だから自分自身が盛り上がるだけでなく、他の人が見ても格好いいと思えるか、喜んでもらえるかを重視していました。それを確かめるため、何らかのステップを終えたら、人に見せるようにしていました」。例えば『今週はファーを調整する』と決めたら、まずはベストを尽くしてやってみて、それから批評を受けるようにしていたという。「完成度の低いものを見せられても批評する方は困ると思うし、『まだ途中なんです』といった言い訳もしたくなかったので、常にベストを尽くすよう心がけていました」。

5ヶ月におよんだクレメンス氏の奮闘が実り、『ARIES - Flower of the Battlefield』はKCF16 静止画部門のグランプリに輝いた。しかし、その結果は奇跡的なものだったとクレメンス氏は語る。「本戦に出場したライバルの作品はどれも本当に素晴らしく、誰がグランプリをとってもおかしくないと感じました。これからも同じペースでがんばらないと、置いていかれてしまう。安心はできないという焦りが、自分の新しいモチベーションになっています。KCF16の審査を通じて、プロの開発者とのつながりができたことも収穫でした。まだまだ自分はプロレベルには遠いけれど、進もうとしている道は間違っていない。その確信が得られたことも、貴重な体験だったと思います」。

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